かつて<放送禁止歌>と呼ばれる歌が存在した。放送禁止歌には二通りの意味がある。一つは「要注意歌謡曲」の俗称。文字通りテレビ、ラジオの放送では流されることのない曲。かつて民放連は「要注意歌謡曲指定制度」を定め、指定を受けた楽曲の放送を見合わせていた。これが、いわゆる放送禁止歌である。そして、もう一つが、70年代に活躍したフォーク・シンガー山平和彦のデビュー曲のタイトル、固有名詞としての『放送禁止歌』。

 今から30年前の1972年、山平和彦が歌う『放送禁止歌』が発売され話題を呼んだ。話題を呼んだ理由は『放送禁止歌』という、そのシニカルなタイトルと突飛な歌詞によるものだろう。白井道夫が作詞したその歌詞は、漢字四文字の熟語ばかりが延々と続く風変わりなもので、熟語以外には助詞も助動詞も形容詞も全く現われない。しかし、それでいて痛烈な社会風刺を秘めた歌詞内容だった。当時、中学2年生だった僕は、ラジオから流れてくるその歌を聴いて強い衝撃を受けた。表現とはこんなにも自由なものだったのか、と痛感した。 『放送禁止歌』は発売になるや瞬く間に多方面に波紋を起こし、そしてすぐに本当に放送禁止になってしまった。前述した「要注意歌謡曲」というヤツに指定されてしまったのだ。ラジオで放送されなくなったとたん『放送禁止歌』のレコード売り上げは、ぷっつりと途絶えてしまい、いつしか“伝説の名曲”と呼ばれる存在になってしまった。

 あれから今年でちょうど30年。時代は昭和から平成へと変わり、世界は21世紀に突入した。「要注意歌謡曲指定制度」はもうとっくになくなり、放送禁止という言葉も形骸化しつつある現在、僕はある一つの企画を思いついた。そうだ、『放送禁止歌』の21世紀バージョンを作ろう!!この企画に?トランジスターレコードが賛同し、昨年後半から僕をプロデューサーとするこのプロジェクトは始動した。まずは『放送禁止歌』の作詞者、白井道夫さんに30年前と同様の手法、四文字熟語だけで現代の世相を斬る新たな作詞をお願いしたところ、快く書いてくださった。それが、この『平成今日歌』である。
 今回のメロディーはフォーク調ではなく、もっとテンポの良いものにしてみた。またボーカルも山平和彦ではなく、新人の若い女性をオーディションで選ぶことにした。雑誌や携帯サイトで広く公募したところ、こちらの予想を遥かに上まわる多数の応募が全国各地から寄せられ、その結果、石川県金沢市在住の24歳、喜多恭佳が選ばれた。歌も名前も「キョウカ」繋がりで、これも何かの縁だと思った。さらにオーディション応募者の中から3人選んで「KYOKA SHOW」というグループも結成した。

 本作には『平成今日歌』とともに、『放送禁止歌』も新たなアレンジで収録している。『放送禁止歌』は30年前、タイトルが放送基準をバカにしているとの理由で放送禁止になった。それに加えて歌詞の中の「職業軍人/時節到来」の一行が問題とされ、発売禁止にもなりかかり急遽「山平和彦/時節到来」と歌い替えて発売にこぎつけたというエピソードもある。従って原詞のままでのリリースは本作の喜多恭佳バージョンが初となる訳で、その点にも注目して戴きたい。アメリカで同時多発テロ事件が起こり自衛隊の海外派遣が問題となっている今の時代だからこそ、『放送禁止歌』はまさに30年の封印を解き世に出すべき歌なのではないだろうか?

「平成今日歌」プロジェクト・プロデューサー とうじ魔とうじ

>>>◎とうじ魔とうじ◎


「平成今日歌」歌詞

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